日本の移住活動

メキシコ、人種、アイデンティティ

ジュンコ・オガタ・アギラル

訳:韓智仁

 

「根を持たずに、この世に生きるものはいない。人類は、植物や動物と同じように、生きるために栄養ある土壌を必要としている。それがなければ、すなわち、根を張らなければ、私たちはしぼみきってしまい、崩壊して、死に至る(シモーヌ・ヴェイユ、1909-1943)」

 

メキシコ人のアイデンティティは、複雑で扱うのが困難なテーマである。独立後、国土内には地域ごとの深い差異があるのにも関わらず、新政府は統一された国をつくるために、一連のイメージとシンボルを確立した。こうして、国歌、国旗、そして建国の物語は、我々が誰なのか、我々は他の世界とどのように異なっているのか、を定めるために創りだされた。

 

本研究の目的は、現在のベラクルス州オタティトランにおいて、日本人の祖先が、どのように日系メキシコ人としてのアイデンティティのうちで結びついているのかについて、20世紀初めにこの地に渡来した日本出身の移民の子どもたちから、より最近の子孫たちまでを対象に探求することである。彼らの複文化的アイデンティティは、グローバリゼーションの近年の文脈のもとで、ますます認知されている。加えて、これらの個人に対して人種的差別がどのように働きかけてきたのかを突き止めようとしたが、その性質を見極めるのは、当初考えられたよりもたいへんに捉えがたく困難であった。

 

これらの人々について話をすることは、彼らがメキシコの文化的イメージの中で表象されることがほとんどなかった(あるいは全くなかった)ので、重要性がある。彼らが国家政策の一部として、国家の成長と発展にとっていかに不可欠であるかということを人々に認知させるために、表象は重要である。この動きはアメリカ大陸中(英語話者とスペイン語話者のどちらも)で、周縁化された集団や人々の中から忘れ去られた人たちについて語る運動、連続ドラマ、映画の創発を伴って起こっている。この例としては、2016年に国立統計地理情報院によって、アフロ系子孫の存在についての直近の統計調査といった確認活動がなされ、また、カルロス・スリム財団により「メキシコに到着した移民たち」と銘打たれて行われた一連の会議では、19世紀から現在までにメキシコに定住した移民たちの様々なグループを取り扱った。

 

本研究は、100年前からこのメキシコの地で共生してきた全ての民族集団の中で、国土中で起こっている混交を代表しているオタティトランの住民に、特に焦点を当てる。この地の文化的側面のみについて言えば、歴史を通して先住民の多様な集団は一つにまとまり、先の征服の時代にスペイン人や他のヨーロッパ人が到来し、植民地時代にはアフリカの奴隷の人々が連れてこられ、そして最後には日本人がたどり着いた。これらの集団の混交は、オタティトランの住民へと帰着した。メスティソ、アフロ系子孫、そして日系人は、国内に存在する(そして常に存在してきた)、メキシコ人のアイデンティティのるつぼの僅かながらの例証である。

 

              世界にとって私たちはいかなる存在か?

                                メキシコへの移民